これまでは、中小零細企業の場合、自社の会計帳簿を税理士事務所に依頼し、作成してもらうというのが一般的でした。
これを通常「記帳代行」業務と呼びます。
ところが、近年の傾向として、税理士事務所では記帳代行を行わず、顧客に自計化を勧めるところが増加しています。
その理由として、どのようなことが考えられるでしょうか。
会計帳簿の作成は、第一義的に企業経営者の責任になっています。すなわち、会計帳簿の作成を税理士事務所に依頼しても、仮に財務諸表に誤りがあった場合、対外的な責任は企業経営者(取締役)が負うことになります。
企業経営者は、そのような重大な責任を負っているという自覚を持つことが、重要といえます。
そのような重大な責任を負う企業経営者であるにもかかわらず、領収書の整理、取引内容の確認とその入力業務、入力内容の確認と試算表の作成、決算といった会計業務の一連の作業を税理士事務所に全面的に丸投げすると、経営者が自社の財務諸表の作成過程に関与しないこととなり、経営数値に対する感覚を養う機会が失われてしまうことになります。
もちろん、経営者が会計基準や税法に精通する必要はありませんが、税理士事務所が作成した会計帳簿の説明を受けているだけでは、経営者として重要な資質である「経営数値に対する感覚」が養われません。
財務データには、経営改善をするためのヒントが隠されており、そのヒントは、税理士から教えられるのではなく、
経営者自らが会計帳簿を作成する過程でつかみ取ることが重要になります。
経営者の重要な関心事である資金繰りや売掛金の回収状況、無駄な人件費や経費の把握等、財務改善のポイントも見えてくるようになります。
自社の財務状況をより早く、かつ正確につかみ取ることが可能になる、これが自計化の最大のメリットといえます。
経営判断のスピード感が問われる現代においては、このメリットは極めて重要であると考えます。
簿記の知識がない、あるいはパソコンが苦手などの理由で、自計化は無理とあきらめている方も多いかと思います。しかし、それは心配するには及びません。
最近の会計ソフトは、よくできており、大半の中小零細企業は、簿記やパソコンの知識がなくても、比較的簡単に会計帳簿を作成することができます。
クラウド会計ソフトを導入すれば、銀行やクレジット取引を自動的に取り込む事が可能となります。
さらに、一度登録した仕訳の内容を記憶し、次回、同様の明細が取り込まれた場合に前回の内容を元に勘定科目を提示する自動仕訳機能もございます。
それでも、心配であれば、立ち上がりの時期だけでも税理士等に記帳の仕方について指導を受けるというのも一つの手でしょう。(当然、当事務所でも、お客様が会計入力に慣れるまで記帳指導を行います。)
中小零細企業の場合、入力項目の80%以上は定型的な取引ですので、最初の数ヶ月間の記帳をきちんと行えるようになれば、それ以後はルーティンワークになるものと考えられます。
年に一度あるかないかのイレギュラーな取引の確認や決算整理、申告書の作成などは、顧問の税理士に依頼すればいいだけです。こうした方が、記帳代行を依頼するよりも税理士に対する顧問報酬を抑えることができます。
ここでは、会計ソフトを使った「自計化を行う手順」について、御紹介させていただきます。
当事務所では、ソフトの性能やお客様とのデータのやり取りのしやすさなど、総合的に勘案した結果、クラウド会計ソフトをメインで使用しております。
したがって、お客様に使用していただく会計ソフトは、MFクラウド・freee・弥生会計オンラインを推奨しております。もちろん、クラウド会計以外の弥生会計や他社の会計ソフトでの対応も可能です。
まずは、お客様の状況に応じて導入する会計ソフトを選定し、その会計ソフトに会社の基本情報、勘定科目等の初期設定を行います。クラウド会計の場合は、金融機関等から自動でデータ取得するための設定も行います。
まずは御社の帳簿作成に必要となる原始資料を用意しましょう。
具体的には、下記の資料をご用意していただくことになります。
※各会社によって原始資料も異なります。
上記は一般的に考えられるものをピックアップ致しましたので、自社に見合った原資資料を御用意下さい。
基本的には、「月毎」そして「日付順」に整理していきましょう。
証憑類の保管方法は、千差万別で、月ごと・日付順にA4用紙に貼って穴あけファイルに保管する方法、月ごとにまとめてクリアパックなどに入れておく方法、スキャナーやスマホなどから取り込んで電子的に保存する方法などがございます。
請求書は日付順に年間分をまとめて保存しておいて良いですが、領収書は月毎にそして日付順に保存する様に心掛けましょう。
資料の整理ができたら、いよいよ会計ソフトへの入力を開始します。
導入する会計ソフトが、インストール型かクラウド型かによって、入力方法も異なってきます。
当事務所が推奨しているクラウド会計を導入した場合、銀行やクレジットカードなどの取引明細を自動的に取り込んでくれます。また、仕訳についても自動推測してくれるので、楽に入力することができると思います。
それに対し、インストール型の会計ソフトだと、現預金や請求書等をお客様ご自身で入力していただく必要がございます。
会計ソフトの操作方法や仕訳方法等、お客様が入力できるまでサポートを行います。